motowakaの備忘録

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太閤山ビエンナーレ2013 来場者の意見から

太閤山ランド内の各所で、富山の元気な作家たち50人が意欲あふれる作品を発表した太閤山ビエンナーレは、8月31日で好評のうちに初回の幕を閉じた。作家たちの手づくりによるこの展覧会は、もちろん展示内容も優れていたが、来場者アンケートでは「大変よい」「よい」が約9割に及ぶ支持を受け、自由記載欄にも鑑賞者の想いが多く書き込まれた。
予想された「駐車場から遠い」「暑かった」という反応はごく少数で、「すばらしい」「感動した」という強い支持が圧倒的だ。「個性的」「発想に驚く」という感想も多く、作家たち自身が一番やりたいかたちを工夫し、意欲作をのびのびと発表したのがよかったのだと思う。口コミでの来場者が多かったが、世代や表現ジャンルがこれほどに幅広いグループ展での未知の作家との新鮮な出会いを喜んで、何度も足を運んでくれた例が少なくなかったようだ。「場所をゆったり使って飾られているので作品のよさが生かされている。一人の作家が複数、あるいは大作を出品しており、作風が分かる。初めて見ていいなと思う作品もあり、県内で活躍している人がよく分かり面白い」という要を得た感想もあった。
多くの人たちが県内の作家たちの制作を身近なものと捉え、同時代の中で真摯に自分の表現を追求している姿を、共感をもって見てくれている。「すばらしい」に劣らず、「楽しかった」「面白かった」という感想が多かったのもうれしかった。越中アートフェスタなどの成功もあり、当地の人々の間では少しずつだが、「わかる」「わからない」ではなく、「作品との出会いを楽しむ」ことが広まってきている印象がある。それこそはアートが人々の心を豊かなものにしていく今日的な意義だ。
もちろん「前衛的なものが多くてよく理解できない」という意見も少数あったが、例えば「近い。そして親しみやすい。最後にわかりにくい。でも楽しい作品でした」などは、本展の感想としてはむしろうれしい内容だ。太閤山ランドという気取らない場所もよかった。現代アートのグループ展は、しばしば地域おこしを兼ねて遠隔の地で行われることが多いが、それを目当てに行くのはもともと美術好きな人だ。たまたま見た人が多かった今回の展覧会によって、作品のエネルギーから「なぜこのような作品を生み出したのだろう、何を思って作ったのだろう」と触発され、「既成概念にとらわれず感性を柔らかく生きることを感じました」との感想を見れば、それはもう無上の喜びだ。
もちろん反省点もある。第2期からはじめた来場者アンケートは最初からすべきだったし、出品作家によるギャラリートークも第2期から取り組んだが、「作品に対する思いが伝わってきました」という感想を読めば、作品をただ発表する以上のことを考えねばと思う。「キャプションに材質技法を」という声も相当数あったし、作者のコメント、プロフィールが欲しかったという要望も多かった。作家は作品こそが根幹だが、作品に接して「もっと知りたい」思いを抱いた人たちは、作家たち自身の想像よりずっと多かった。せめて出品目録ぐらいは作成すべきだった。
「空間の高さを生かした展示、作品がもっとあっても」「屋外展示がもう少しあっても」「もっとキャンバスからはみ出た作品に出会いたい」など、さらに意欲的な発表への期待や、広報不足という指摘、毎年開催してほしいという要望も少なからずあった。この展覧会はビエンナーレと称した通り今後2年ごとに開催していき、自分たちが発表したいと思える場をみずから作っていくため、5回10年は続けるという覚悟だという。もちろん一度で果たせる望みではないが、世代やジャンルを超えて集まった作家たちが、いい会場を作り上げるというただひとつの目的に向かって意見を交わし協力しあい、その熱意が観衆にも伝わる好結果を呼んだ体験は、この地域の美術状況を活性化していく確実な第一歩を刻んだ。今回の手ごたえをしっかりと味わい直し、次回のさらなる飛躍を期待したい。

太閤山ビエンナーレ 第2期+第3期 アンケート集計結果