motowakaの備忘録

毎度ご無沙汰いたしております

「パレット」 高田 誠(1913〜1992)

ひとつの名画が完成するまでに、画家の絵筆は何百、何千回も、画面とパレットの間を往復します。パレットは、いわば画家の分身。そこには巨匠たちの創作の秘密が隠されています。
日展の理事長も務めた高田誠(日本藝術院会員、文化功労者)は、山麓に抱かれた集落など、懐かしくも穏やかな風景画で親しまれた洋画界の重鎮でした。風景の前面に大きく盛り上げた花瓶の花を描くのは、高田が得意とした独特の構図。背景の山容は毎年のように描いた妙高のようです。
高田の画風の特徴は「点描」ですが、それはヨーロッパで印象派が用いた科学的な「色彩分割」とは異なる、柔らかな表現の質を獲得しています。おだやかな詩情の中に、ほのかな幻想性が潜む高田芸術の魅力の秘密が、このパレットには見てとれます。
4月16日から近代美術館で開かれる「色彩は踊る 巨匠たちのパレットと作品」展では、梅原龍三郎安井曾太郎ら日本近代洋画の巨匠たちにピカソ、ダリなどを加えた、世界でも稀なパレットのコレクションと、その画家による作品をあわせてご紹介します。
老舗の洋画商、日動画廊の創業者の古希を祝し、画壇の重鎮たちが愛用のパレットに思い思いの絵を描き入れプレゼントしたものが、このパレット・コレクションの原型です。現在では笠間日動美術館茨城県)に収蔵されている膨大なパレットの中から、今回の展示では文化勲章受章者、文化功労者、藝術院会員などを中心に選りすぐり、さらに郷土ゆかりの作家たちを特別出品の一コーナーとして加え、それぞれのパレットと作品をあわせて120点以上を一堂に展観します。洋画の魅力を存分にご堪能ください。